変身のニュース
宮崎夏次系
宮崎夏次系先生の初単行本となる九篇の短篇集。
俺マン2012 で9位に選ばれました。
ベスト10で唯一未読でしたので、満を持して読みました。
いわゆる「ニューウェーブ系」と言われる高野文子先生、市川春子先生、西村ツチカ先生、田中相先生、安堂維子先生、九井諒子先生などに見られるような、固有の雰囲気を持った作品です。
割と漫画を読み慣れている人向けの漫画と言えるでしょう。
一話目からかっ飛ばし過ぎていて何とも言えない状態になりましたが……
兄はフリーター、弟はエリート、そして妹は激しい妄想癖により施設に預けているが、ある日その妹が退院する事になるセンシティブな二話目の「水平線JPG」を読み終わると、
「何だこれ、おンもしろいなー!」
と、初めてごま蜜団子を食べた時の定助のような感想を抱きました。
想定外の方向へ吹っ飛んで行くキャラクター・ストーリー、そして毎話読み味が変わる様は、「空が灰色だから」を髣髴とさせる部分も。
毎回、最後の1ページまで気を抜けません。
57回人工臓器を入れ替えている少女とパパのお話を描いた「娘の計画」など、全体的にファンタジックな要素が自然に溶け込みつつ、シュールさの中に、人間のプリミティブな感情と切なさが内包されています。
若さ故の鬱屈から、遊び半分でテロを行う「成人ボム」は、非モテ童貞の凶悪犯罪者でももし彼女の一人でもいたら全く違う結果になるのだろうという浅井ラボ先生がよく言っておられる言説を思い出しました。
絵はお世辞にも上手とはいえませんし、時折演出と見るにもギリギリのラインで雑な部分もあります。
ゴチャゴチャし過ぎて何を描いているのかパッと見で判別できない箇所も。
それでも、女の子が可愛く魅力的です。
9話目にして黒髪ロングの子もメインで出て来て私得。
個人的には表紙の女の子には魅力を感じなかったのですが、中の動いている表情豊かなキャラ達には惹き付けられる物がありました。
決して好みの絵柄ではないだけに、新鮮な気持ちです。
台詞のセンスは割と普通なので、そこが尖ると更に見応えのある作品になると思います。
王道を見飽きて、変わった物を読みたいという方にお薦めです。
75点。