

ぐらんぶる1、2巻
原作:井上堅二 漫画:吉岡公威
講談社グッドアフタヌーンKC
最初から自分ができるものだけ
選んでいたら何も始まらない
大事なのはお前が興味を
抱いているかどうかだろ
試し読み
『バカとテストと召喚獣』の井上堅二先生最新作!
作画を担当するのは、『マテリアル・パズル ゼロクロイツ』『輪廻のラグランジェ 暁月のメモリア』『甘城ブリリアントパーク』などの吉岡公威先生。
昨年11月・12月に1-2巻が連続刊行されました。
今作は、頭を空っぽにして心から楽しみたい時に最適な青春キャンパスライフコメディです。
電車の中で読むのは危ないくらい、笑える作品。
何よりも、この作品を雄弁に語るのは裏表紙でしょう。
大体こんなマンガです。
「この裏表紙がひどい!(褒め言葉)」にノミネートしていてもいい位。
バーコードがシュリンクに貼られて全面をイラストで埋められるようになった講談社の裏表紙の無駄遣いです(褒めてます)。
ちなみに、カバー裏はもっとひどい(だがそれがいい)。
バカな野郎共、酒、バカ騒ぎ。
一応はダイビングマンガであり、女の子も可愛いのですけれど、それで8割を占めてます。
主人公・北原伊織は、大学入学を機に従姉妹の住む伊豆のダイビングショップ「Grand Blue」に引っ越してきた。
今、伊織の新生活が始まる――
男子として実に健康優良な伊織は、好感の持てる主人公です。
バカしかいない場所に飛び込んだ彼もまたバカだった……!
そんな彼の、破天荒かつ前途多難過ぎるキャンパスライフは序盤から笑いに満ちています。

焼酎! ウォッカ!! スピリタス!!!
コール、飲み比べ、野球拳!
イッキ、バケツ、洗面器!
漢の青春ここにあり!
主なサークル活動は酒を飲むこと、というリアリズム。
雄度の高い、パワフル過ぎる先輩たちによるダイビングサークル「Peek a Boo(ピーカブー)」。
伊織たち新入生は、あっという間にそのカラーに染められていきます。
そんな壮絶なバカ騒ぎが、吉岡先生の高い画力によって無駄に綺麗に、テンション高く描かれて行きます。
ムチャクチャではありますが、「こいつら楽しそうだなー」「こんな大学生活良いな~」と思わせてくれます。
井上先生の持ち味が存分に出たテンポ良くキレのあるギャグと、吉岡先生の絵の迫力が実に素晴らしい化学反応を生んでいますね。

私が特に好きなのは、同じ新入生の今村耕平。
美形でありながら、美少女Tシャツを悠然と着こなすこの只者ではない男……

その魂の慟哭に私は心打たれたッッッ……!!
「ウェットスーツのテイスティング」を平然とやってのけようとする。
そこにシビれる憧れる。
残念な悪友イケメンとして、とても良いキャラです。
彼が伊織の部屋を魔改造するエピソードや、新歓コンパ話の腹筋破壊力はなかなかのなかなか。
ただし、重度のシスコン。
妹の方は伊織と最悪の再会を果たし、ツンツンな千紗。
ダイビングを愛する女の子。
更に、伊織をバイだと勘違いし、「私もバイなんだ」とカミングアウトしてくる梓先輩など、女性陣も可愛く魅力的に描かれています。
……いるのですが、あまりラブコメという感じではなく。
そういう要素が皆無とも言いませんが、やはり突き抜けたテンションの青春という側面が強いです。
この作品は、こうした9割を占めるおどけた部分に対して、1割のシリアスシーンがとても魅力的です。
ダイビングマンガとしての面目躍如という感のある、海やダイビングの魅力を真面目に描いたシーンは秀逸。
そこで覚える興奮や爽快感は、純正ダイビングマンガである『あまんちゅ』にも匹敵します。
未経験でボンベを使った水中呼吸もままならず、不安も抱える伊織。
しかし、そこで普段は滅茶苦茶でふざけた先輩が、格好良く優しく背中を押してくれる。
そんな姿が堪りません。
人生ってこういうモノかもしれないな~、と思います。
絵が綺麗なだけでなく、コマのメリハリも利いていて読み易いです。
深いテーマはないですが、読んでいて何度も笑える、痛快という言葉が相応しい上質なエンターテインメント作品です。
ダイビングに興味がある方にもない方にもオススメします。
まずは試し読みで!