先ほど、『BLOOD ALONE』の高野真之先生による「イブニングの打ち切りラインが4万部」という呟きがあり、マンガ業界関係者が震撼しておりました。
新人は1万部すら刷って貰えない事も多い、昨今。
そんな中、4万部で足切りとは……
それを受け、松田未来先生がこんな呟きをなさっていました。
だから、作家さんが初版の売れ行きを神経質に気にするのも大目に見ていただけるとありがたいです。あと、単行本は発売されたらなるべく早く買ってくださいヽ(´o`;
好きな作品や、打ち切られて欲しくない作品がある読者としては、できることは発売日付近に早期に購入することで貢献できます。
後は、インターネット全盛の今だからこそ、手紙を編集部伝いで出すことも「熱心なファンが付いてくれてるんだな」と編集さんに思ってもらう効果があるそうです。
しかし、私のような漫画狂であっても、新刊発売を見逃すこともあります。
実際、今日が『放課後さいころ倶楽部』2巻の発売日だという事に気付かなかったという失態!
普通の人がどんな状況であるか、想像に難くありません。
新刊点数は年々右肩上がりなので、最近の漫画は新刊台にいられる期間も僅か。
Amazonやブクログなどでは、発売日を知らせてくれるサービスがあるので、特に好きな作品はそれを活用すれば良いですが、そうでない作品、数年に一度しか出ないような作品などは、それも難しかったり……
ということで、私も微力ながらなるべく新しめの作品を紹介して行きたいと思っています。
そこで、早速推したい先日「ヒトはイカにして滅んだのか?」(紹介記事)を発売した、柴谷けん先生。
この作品は多分マイナーですが、面白いのでもっと売れて欲しいという願いを込めつつ、既刊もレビューします。

小さいおじさんと、不機嫌な花子さん
柴谷けん
宝島社
不覚にも大きな失敗はあったけれど
けれども
それが誰のせいでもなく
そこに心残りがなかったことは確かで
だからちっとも可哀想なんかじゃないですよ
「第二回このマンガがすごい!大賞」で最優秀賞に選ばれ、発刊されたデビュー作の単行本です。
三篇の短篇に、単行本描き下ろしの一篇を加えた四篇の短篇集となっています。
第三回最優秀賞の「宇宙の瓶づめと猫と箱庭」(紹介記事)は好みの別れる作風ですが、こちらは割と間口が広く、比較的誰でも入りやすい作品であると思います。
小気味良いテンポで展開され、勢いのあるギャグ描写は、なかなか笑えます。
ただ、それだけではないのが今作の魅力。
誰もが抱えるような大小様々な悩みを掬い取り、丁寧に描写してみせます。
笑いあり涙あり。
しっかりと、キャラクターが生きています。
猫や天使なども混じっての、優しく温かい空気感が心地良いです。
そして、『ヒトはイカに~』でも言及した柴谷先生の最大の魅力が今作にもしっかり備わっています。
どういう風に良いのか。
そこを語るにはちょっと核心に触れざるを得ないので、読んで頂くしかないのですが……
面白いな! と思わせてくれます。
こういう事を映像で表現しても楽しいだろうなぁ、と。
面白いお話を読みたい方にも、ハートウォーミングなお話を読みたい方にもお薦めです。
70点。

今夜は昨日の星が降る
柴谷けん
宝島社
自分に正直にゆっくりやっていけばさ
居場所は自然と見つかるんだよ
こちらは、上記単行本から一年少々して刊行された2冊目の短篇集。
帯の推薦人には、『第七女子会彷徨』のつばな先生の名前がある通り、藤子F不二雄先生や『アフター0』が好きな方に訴求力のある作品です。
「地球を守るスペースガード」こと、地球近傍天体の観測を行っている研究者が、近日中に小惑星が衝突して地球が滅びてしまうことを予見してしまう。
そんな有事の際に発動される「オーダー58」、それは魔女への協力依頼であった――
SF要素とファンタジー要素の混じった、面白いお話になっています。
『小さなおじさん~』に比べると読み味は若干ダーク寄り。
それでも丁寧な心理描写と構成で、読後はスッキリとします。
良い漫画だったなぁ、と思いました。
こちらもまた、様々なアイデアや趣向が凝らされた作品であり、ネタバレされずに読めると幸せになれるでしょう。
既視感がないか、と言われればそんな事もないのですが、新人と考えれば将来に期待したくなります。
この2冊と『ヒトはイカにして滅んだのか?』はどれから読んでも良いと思いますが、学園モノが好きな方は『小さなおじさん~』を、SF(すこしふしぎ)やショートショートが好きなら今作を、風刺や変わった作品が好きな方は『ヒトはイカに~』をお薦めします。
刊行順に読んで、絵の変遷を追うというマニアックな楽しみ方も、それはそれで。
70点。