
過去記事 『花もて語れ』 週刊連載となり今年は4冊も単行本が出る素敵な年で毎回胸と目頭を熱くしました。自分に何の自信もない者がそれでも伝えたい想いを震えを抑え懸命に届けようとする健気さ、尊さ。 喪った者・遺された物、その悲愴の先にある温かい祈りと願い。 何かに飽くなき情熱を傾けた事がある全ての人への熱いエールと讃歌。 そういった部分に堪らなく涙が流れる稀有な作品です。 作中に登場する名作とキャラクターにより二重に語られる様々な深いテーマ。遂に物語もあと3冊。正座して見届けたいです。 #俺マン2013 タイトルの恐るべき吸引力。そして、何とその内容は今年最も注目すべき数学漫画。高等数学まで扱う漫画は寡少で、それだけでも貴重。その上、漫画表現への挑戦的な表現や、数々の驚きをもたらす超展開。見所の多い、頭の良いバカ漫画です。 『惑星9』で話題を呼んだ町田洋先生のの中でも一番好きな作品。電脳マヴォにて無料で読めるので是非読んで欲しいです。拘り抜かれた描線によって生じる独特の世界と描かれる物語の中で生起する感情、最後のセリフが大好き過ぎて。漫画読みの幸せを味わいました。 『はじまりのはる』 福島在住の作者が冷静な眼差しで描く被災地の様子、そこで生きる人々の現実。忘れてはいけない大切な事を再認識させられます。そして主人公となる高校生達は、そんな過酷の中でそれぞれの大事な物の為に戦い、時に涙する。世界で必死に生きる人の希望は美しい。 『廃墟少女』 廃墟に宿る滅びの美学と、少女という刹那の美学の組み合わせを(老人が主人公の作品もありますが)、妖艶で微細な筆致で描き表した廃墟好き・妖しいもの好きには堪らないフェティッシュな短編集。ただの雰囲気漫画ではなく、物語としてもしっかりと読ませます。 『同人王』 ニートである主人公の底辺さ、同人誌で生計を立てて行こうとする様、美少女同人作家・肉便器先生がレイプ物を描き続ける理由……それらに途轍もない強度の文学性が宿っています。同人創作という特殊なテーマですが王道展開を上手く使い面白く読ませつつ、魂と熱が特盛。 原作:小林 立,作画:五十嵐あぐり 『咲-Saki-阿知賀編』 幾度もの聖地巡礼、吉野が故郷となり至った極限の感情移入。運命の3月12日、最終回は読む前に30分正座して涙が止まらず、全104頁も泣きながら読破した体験は絶対に忘れ得ません。正に人生における俺マン。これからも松実玄さんと共に歩みます。 #俺マン2013
俺マン2011、マンガ大賞2012 からの 鉄楽レトラ1巻
俺マン2012 兎来栄寿選
レギュレーションも参加資格も特にない、今年読んだ中で面白かったマンガをTwitterで呟く俺マン2013。
年々規模が大きくなり、今年は今井哲也先生やふみふみこ先生を始めとして、漫画家の先生方も参加。
そして、今回は投票作品検索サイトも作られました。ランキングも楽しいですが、自分と趣味嗜好の似た人を見付けてその人の挙げている未読作品を漁ると非常に確度の高いリコメンドとなるのでオススメです。
ちなみに、私の一昨年と去年の俺マンはこんな感じでした。
2011年
預言者ピッピハルシオンランチ花もて語れ孤高の人海街diaryハンター×ハンタークロスロオド3月のライオン草子ブックガイド少年ノート
2012年
火の鳥オリジナル版
14歳完全版
キーチVS
花もて語れ
機械仕掛けの愛
イレブンソウル
ごっこ
カーマトリック
永遠図書館
バーバ・ヤガー
すみっこの空さん
地球の放課後
ひまわりさん
AGEHA
咲-Saki-阿知賀編 episode of side A
というわけで、私の俺マン2013、行ってみましょう!
キーチVS 11
新井英樹
既巻紹介 6巻90点 7巻85点 8巻85点 9巻90点 10巻90点
今年も最も魂を燃やされた漫画。タブーを軽々と踏み荒らしていく新井英樹先生にしか描けない圧倒的カタルシス。社会・政治・米国といった誰もが諦観せざるを得ない巨大な相手に対し、微塵の躊躇もなく拳を振り上げるキーチの姿は心に刻み付けられました。
花もて語れ 10巻
漫画:片山ユキヲ,朗読協力・朗読原案:東百道
既刊紹介 1巻80点 2巻85点 3巻85点 4巻85点 5巻85点 6巻85点 7巻85点 8巻90点 9巻85点 10巻85点
寿司 虚空編
小林銅蟲
青いサイダー
町田洋
既巻紹介 1巻80点 2巻80点
廃墟少女
尚月地
紹介記事
同人王
牛帝
紹介記事
ゆずべんとう1巻、2巻
葵梅太郎
1-2巻75点
コミックス発売日から毎日エゴサーチしていたものの、余りの世間での呟かれなさに悶々とする日々でした。子供から大人まで楽しめる柔らかい絵柄と作風の中に溢れる温かさは、もっともっと共有されていいもの。葵梅太郎先生の今後が楽しみです。
はじマン チャレンジ! はじめてのマンガ 1巻
ほったゆみ
1巻80点
マンガを描くことの楽しみを、普段絵すら描かない人でも楽しめる新たな遊びの提示。その向こうには、マンガの持つ自由さと楽しさの真髄も見える素晴らしい試みです。これを読んだ子がマンガを描く楽しみを知り、将来誰もが知る名作を著したら何と素敵な事か。
以下は、次点となった作品。
SCATTER あなたがここにいてほしい
新井英樹
もし来月発売に延期せず、25日に5巻が発売されていれば、十分俺マンになりえた作品です。
永遠図書館
赤星治人
本当に本当に大好きですから……
続編や外伝、いつまででも待っています。
前回記事:咲-Saki-第120局[因縁]感想
TXN系列では、今夜からいよいよ咲-Saki-全国編一話が放送開始!
既に一話は先行上映を観に行きましたけど、それはそれ、これはこれ。
お祭として楽しむべき時です!
それに先立って、以前声優予想をしてみました。
あたるも八卦あたらぬも八卦。
ファタモルガーナの館
公式HP(1・2章をプレイできる体験版有り)
年始の隙を縫って、ずっとやりたいと思いつつインストールだけして積んで来たこの作品を無理やりクリアしました。
同人ゲームでありながら、2012年のあらゆるAVGの中でトップに挙げる声も少なくない、批評空間でも中央値91点という超高評価の作品。
2012年といえば、『ルートダブル』が私の中では別格として存在するのでそれを超えるという事はありませんでしたが……
それでも、その凄まじいハイクオリティは惜しみなく称賛したいです。
全年齢向けの、西洋浪漫サスペンスホラーと銘打たれたノベルゲーム。
プレイ時間は平均して20~30時間という所。
ボイスはないので、若干速読気味で私は16時間程でした。
同人ゲームとしては、『月姫』、『ひぐらし』、『ひまわり』などの傑作と並び称されても全く違和感はありません。
マンガソムリエを標榜しながらこんなことを言うのもなんですが……
本当に、ノベルゲームという媒体の物語が与えてくれる重厚さは堪りません。
漫画だったら30巻、小説なら10巻、ドラマなら4クールはかかるであろう重みを、一枚の円盤に乗せて一気に届けることができる。
それでいて、この『ファタモルガーナの館』であればイベント頒布価格が2000円。
こんなにコストパフォーマンスの良い娯楽はそうそうありません。
しかし、先日Keyの馬場社長が「ノベルゲームを楽しめる人口は30万人くらい」と仰ってました。
個人的にはもう少し多いと思いますが、それでもかなり多目に見積もったとしても100万人未満程度。
それだけの人口にしかこの感動が届かないのか、と考えると複雑な想いもありますが……
ともあれ、普段ノベルゲームに親しんでいない人にも絶対好きでハマる人がいるであろう、広く薦めたくなる作品でした。
このゲーム、美点が幾つもあります。
まず、最も大きいのはシナリオ。
陰惨でありながらも、引き込む力強さを持った圧巻の展開。
特に後半は先を読むのを止めるのが難しい程です。
多少の寝不足による翌日の心配は脇に置いてプレイしてしまう事請け合い。
語り過ぎるとネタバレになるので難しいですが、素晴らしい点が幾つもあった、とだけ言っておきましょう。
次に、音楽。
イヤホン・ヘッドホンでのプレイを推奨されますが、是非そうした方が良いです。
個人的には更にプレイするのは夜、部屋の電気を消してという状態がとてもお薦めです(笑)
それ位、音楽に力と存在感があり、作品への没入感を深めてくれる役割を果たしています。
非常に上質な楽曲が並のAVG以上の曲数収録されており、サウンドトラックも2枚組で発売。
声楽、ピアノ、弦楽器など、壮麗さやメランコリックさを引き立てる格調高い曲の数々を耳にする為だけにプレイしても良い程です。
そして、ヴィジュアル。
絵は見ての通り非常に美麗です。
一枚絵だけでなく、立ち絵の表情差分でさえも素晴らしいものがありました。
インターフェイスにも、選択肢を選ぶ表示一つ取っても強い拘りが感じられます。
私はそもそも、漫画も線と記号だけでも面白ければ良いと思っている位にヴィジュアルには興味を持ち難い方なのですが、この作品に関しては惚れました。
耽美な人物たちに溜息すら漏れます。
メインストリームにはない、手間も掛かる画風故に、作品の確固たる世界観作りとしての役割を担っています。
これらを総合して形作られる西洋浪漫という観点から見ても、とても良く出来ていました。
脚本・音・絵が、しっかり全て相乗していると強く感じます。
RPG等では西洋ファンタジーというのは一大勢力ですが、ことAVGにおいてここまでコテコテの西洋モノというのはなかなか珍しいです。
なかなか商業でもこういう作品は出し難いでしょうし、西洋好きの人はそれだけで触れてみる価値がある作品といえます。
特に、『ヴァルキリープロファイル』、『ドラッグオンドラグーン』、『ニーア』、漫画でいえば『狼の口』、『ブラッドハーレーの馬車』のような、陰鬱な西洋系作品が好きな方には絶対の自信を持ってオススメ出来ます。
欠点と言える欠点はほぼないのですが、気になったのは中世の人物達が現代風の言葉遣いをする所。
これは『キングダム』などでもそうですが、人によっては全く気にしない部分でもあります。
ただ、非常に作り込まれた世界観であるだけに、現実に引き戻される要素は無かった方が良かったなと個人的には思いました。
割と血なまぐさく陰鬱なストーリーですので、そういった物が苦手な方には厳しいでしょうけれど、大丈夫という方には是非ともやってみて頂きたい傑作です。
89点。
ネタバレで色々と語りたい所ですが、それには多くの時間を要する骨太さなので、とりあえず少しだけ。
後に余力があったら追記します。
本当はTSや百合が好きな人にも薦めたいのですが、それをするとネタバレになってしまうもどかしさ。
最後の、選びたくても選び取れない選択肢は、心底素晴らしかったです。
12月の新刊は引越しで全然読めていなかったので、少しずつ積みを崩しています。
アオイホノオ 11
島本和彦
既刊紹介 5巻75点 6巻75点 7巻80点 8巻75点 9巻80点
10巻は今までの中でも輪をかけて面白かったですが、11巻もその勢いのままに。
最近のアオイホノオは素晴らしいッ!
「こんなうらやましいすげえもん作りやがってふざけんな!」
と叫ぶホノオに瞑目して感情移入してしまいます。
「(タッチは)何にタッチするつもりなんだ!? あだち充!!!」
「車田正美は天才だ!! こっち方面ではもう…誰も勝てん!!!」
といったあたりも腹筋がヒクヒクと。
実在の作品と人物が様々な感慨深さを催します。
余談ですが、島本和彦先生が描いた『キルラキル』同人誌『シマラキル』は、『Gガンダム』並に作風にベストマッチしていて傑作だと思います。
80点。
續 さすらいエマノン
原作:梶尾真治 漫画:鶴田謙二
おもいでエマノン 85点
さすらいエマノン 75点
『エマノン』シリーズの漫画版三冊目。
今巻は非常にセリフの密度少なく、絵が主体となってエマノンのある一時の暮らしが描かれます。
やはり、最初の『おもいでエマノン』が非常に衝撃的で、そこで一つのピークを迎えてしまった事もあり、その後のエピソードは言うなれば長い長いエピローグのような、薄まった感じを受けてしまうのは否めません。
それでも面白いのですけれどもね。
特に、カラーページで描かれている部分は良かったです。
こんなまったり温かい『エマノン』も良いですね。
75点。
ちはやふる 23
末次由紀
既巻紹介 11巻80点 12巻80点 13巻80点 14巻80点 15巻85点 16巻85点 17巻80点 18巻85点 19巻85点
いつも最高に熱いのですけれど、その中でも一際熱い試合の終焉。
そして、もう一方の戦いの意外な急転。
更に、名人の存在。
激ってしょうがない、隙のない面白さです。
しかし、今日末次由紀先生は「漫画の描き方がわからなくなった」と呟いておられました。
そこには、こんな凄い作品を描く人でも想い悩む事があるのだという安心感と、創作という広漠過ぎる宇宙の幽邃さに畏怖がありました。
そんな張り詰めた展開の中で、呉服屋でスノー丸グッズを見付けて女子校生らしい笑顔を浮かべる詩暢ちゃんが愛しいです。
おまけ漫画の机くんの格好良さも良いですね。
80点。
ナナマルサンバツ 7
杉基イクラ
既巻紹介1巻70点 2巻70点 3巻75点 4巻75点
こちらも巻を増すごとに面白さ・熱さの増す競技クイズマンガ。
御厨屋くんの最大集中に、大蔵との対決を迎えた笹島先輩のクイズを楽しもうとする姿勢に、胸が高鳴ります。
33問ラストは素晴らしいです。
そして、真理の兄であり笹島先輩と旧知の仲である誠司のエピソードも気になる所。
「君の知らない物語」があんな風に使われたお話もニヤリとしてしまいました。
日常にクイズが満ちている描写も面白いですね。
今回は巻末ペーパーテストが、井上出題という事で易しめであり、私の大好きな宇宙ジャンルだったので47点取ることができました。
しかし、あのアニメはまだしもまさかあのゲームまで問題に出して来るとは。
相変わらず、一冊で二度美味しいコミックです。
75点。
とめはねっ!鈴里高校書道部 12巻
河合克敏
この部活モノも、安定して面白く読ませてくれます。
主人公のユカリを中心に、少しずつステップアップしていく鈴里高校の面々を見守る時間の何と穏やかで楽しいことか。
合宿で圧倒的な女性率の中で結束する男子陣が面白いです。
しかし恋のライバルではあるという微妙な関係性が良い味。
日常に目にする物と書を絡めた雑知識も学べます。
基本的にガチャピン的なまったりしたムードの漂う作品ですが、一条くん絡みは熱く燃えさせてくれる所もあり。
良い漫画です。
75点。
ハイスコアガール 5巻
押切蓮介
既刊紹介 1巻70点 2巻75点 3巻80点 4巻80点
30話の大野さんの可愛さは異常。
大野さんがザンギエフ使いになった理由に、大野さんの素晴らしさが体現されています。
じいややハルオ母もいい味を出す巻ですね。
ゲームギア、真サムスピ、KOF95、ヴァンパイアハンターとゲーマーとしては心擽られるタイトルも盛りだくさん。
『プピポー!』が押切作品としては先行してアニメ放映開始となりましたが、キャラデザインが想像以上に良い感じだったので、こちらのアニメ化にも期待大です。
しっかり実機映像を使ってくれたら熱いですね。
75点。
イノサン 3巻
坂本眞一
既刊紹介 1巻80点 2巻80点
俺マンに入れても良い位に素晴らしい作品。
圧倒的美麗さの作画。
本当に、服の刺繍一つ一つを週刊で描いている事に恐れ入ります。
その超画力を用いて、処刑や拷問といった血腥い行為を克明に描き出していくことで与えられる痛さ。
その先に、人の持つ業の深さや精神性の究極点が見え隠れします。
フランスという国の過渡期を描いた物語でもある今作。
シャルルの精神の変遷と、やがて出てくるであろう著名人達との絡みが純粋に楽しみです。
80点。
本日、あかね日和 2巻
桜庭ゆい
既巻紹介 1巻70点
明治時代の料理を絡めた、三角関係モノ……
だったのですが、2巻では料理はそこまでエピソードに絡まない添え物で、普通の恋愛漫画になってしまったのはちょっと残念でした。
もっと時代性を反映させたり、いっそ和洋料理対決くらいやってくれたりしても良かったような。
とはいえ、三角関係モノとしてはしっかり結末まで描き切れています。
個人的には、秋ちゃんに肩入れしていたので――
その後に来る言葉は読んでお確かめ下さい。
ポラリスコミックスが俺マンで何れ位挙がっているかは楽しみであり注目の一つです。
65点。
夜さん 2巻
佐原ミズ
ドラマ化もした「マイガール」(1-5巻80点 )や、「鉄楽レトラ」1巻80点 2巻80点 3巻80点 )の佐原ミズ先生の描く、優しく切なくちょっぴりファンタジー要素もある現代劇。