街田シカク
白泉社花とゆめコミックス
涙が出るうちは
心が動いてる証だから
この日がなければえられなかった幸せが
君にはあるから
涙が出るうちは
心が動いてる証だから
この日がなければえられなかった幸せが
君にはあるから
LaLaメロディonline初のコミックス4冊の内の1つ。
そして街田シカク先生初の単行本でもあります。
現在1話・5話・特別編が閲覧可能。
一話完結型のお話なので、1話を読んで雰囲気を掴むと良いでしょう。
いやぁ、美しい。
色々な意味で美しい物語です。
個人的にLaLaメロディonlineの中でもイチオシの作品であります。
あの世とこの世の間に存在し、時の干渉を受けず未練ある魂がやって来る心の風景に繋がる場所、「あわいの庭」。
そして、そんな迷える魂に力添えをするのが、あわいの庭師。
そこに訪れる老若男女様々な者達の、抒情的な物語が紡がれて行きます。
この作品を象徴するのは、色々な草花。
物語に寄り添うように、象徴的に効果的に描かれます。
花の盛衰に重なる人の想いという構図は美しく、普遍性を持ち、心を打ちます。
死んでしまった者達のお話ということで暗い内容を想像するかもしれません。
ただ、読んでみると意外な程に明るさを感じる作品群です。
未練を描くお話なのですが、まさに今際の際の赤木しげるの「無念こそが人生を輝かせる」という言葉を思い出すような内容で、叶わなかったけれど純粋だった想いの美しさがこの作品にはあります。
台詞やモノローグに使われている言葉選びも瀟洒で、すっと入って来ます。
上記の「夏椿」の中の
…私絵描きさんて好きよ
散らない花を咲かす事ができるでしょう?
のような台詞は味わいがあって、良いです。
ただ、読んでみると意外な程に明るさを感じる作品群です。
未練を描くお話なのですが、まさに今際の際の赤木しげるの「無念こそが人生を輝かせる」という言葉を思い出すような内容で、叶わなかったけれど純粋だった想いの美しさがこの作品にはあります。
台詞やモノローグに使われている言葉選びも瀟洒で、すっと入って来ます。
上記の「夏椿」の中の
…私絵描きさんて好きよ
散らない花を咲かす事ができるでしょう?
のような台詞は味わいがあって、良いです。
未亡人に惹かれてしまった少年を描いた物語「金木犀」なども好きです。
金木犀の香と共に、ドヴォルザークが聞こえて来ます。
歳の差のある恋愛物が好きな方にお薦めしたい一篇。
人間が死んだ後の世界、というのは宗教に密接に関わっています。
死後の世界に行く前という世界観、花が枯れ落ちる時にも美しさを見出す日本人的な感性が溢れた今作が、他の国の人から見たらどう受け止められるのかな、という部分には興味があります。
辛苦と悔恨にまみれた人の浮世。
こんな救いが現実には無いとしても、多くの人が大小の未練を抱えたまま生きて逝くしかないのだとしても、淡い泡沫の夢として、美しいお伽話としてこんなお話がある。
それはとても素敵なことだと思います。
お薦めしたい一冊であり、街田先生の今後の作品も期待したいです。
75点。