日本人の知らない日本語
蛇蔵, 海野凪子
今、私の中で正しい・美しい日本語、及び語彙力への関心が急激に高まる周期が来ています。
様々な本を手に取っている中の一冊に、漫画のこの本がありました。
何と、2010年にドラマ化も果たしている作品だそうです。
海野凪子先生の、外国人向けの日本語学校での講師の体験に基づいたエッセイコミックです。
様々な日本語の成り立ちや正しい使い方を、読みながら学んで行く事の出来る内容になっております。
平安時代の「もじ」は、可愛いという理由で付けられた語尾で、今日までそれが伝わっているという日本語の面白味。
現代で言えば「ぽよ」に相当するでしょうか。
大和言葉にしろ変体仮名にしろ、どんな言葉が流行り、或いは廃れて行くのかは時代の趨勢で決まりますからね。
それでも、なるべく日本語独特の美しい表現は残して行きたいものですが。
物語としては、外国人の生徒達による様々なナイスボケが笑えます。
助数詞は日本人でも本当に難しい部分ですけれど……(本書ではストッキングの数え方やスキーの板の数え方も学べます)。
クロサワ映画が好きなスウェーデン人は、「男一匹」という表現を覚えて、人間の数え方を「匹」だと誤解していたり、任侠映画が大好きなフランス人マダムが自己紹介の時に「おひかえなすって!」と言い出したり……
カルチャーギャップによる面白可笑しさが随所にあります。
元々は織姫の芸事上達を願う意味合いだった七夕の短冊体験では、個性豊かなお願いの数々が。
外国人が日本のイベントに参加している姿は、何故か無性に和みますね。
漢字を完全なるアートの領域に持って行くイタリア人生徒も微笑ましいです。
外国人にとっては、漢字の学習は物凄く大変でしょうね。
スラスラ書ける方も偶に会いますが、すごいなあと思い。
中国・韓国の人であっても苦戦は必至で、唯一台湾の人だけは繁体と旧字体で共通する部分があって多少は易しくなるようです。
意外にもカタカナの学習も困難だとか。
中国語では「パ」にも2種類の発音があって「日本語では『パンダ』ですか? 『パンダ』ですか?」と訊かれてもどちらも同じに聞こえる、などのエピソードが興味深いです。
巻末には1コマ漫画で「外国人が持ち帰りたい日本の物」という事で、なぜか食品サンプルや狛犬が挙げられていたり、4コマ漫画があったり、はたまたコラムもあって色々と楽しめます。
中でも、マンガやアニメを見て日本に憧れ日本語を勉強する外国人の項で、
「メメタァとかメギャンとか説明するのが難しい擬音語があって大変」
という一節が印象的でした。
楽しく読めて賢くなれる良著で、オススメです。
70点。