ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~ 2巻
宮崎 克, 吉本 浩二
あなたたち‼
仕事に命かけてください‼
そんな台詞を漫画の神様に云われてしまったら、頑張るしかないですよね!
既巻紹介 1巻80点
このマンガがすごい!2012オトコ編で1位を獲得した、チャンピオンで不定期連載されている作品。
秋田書店なので「ブラック・ジャック創作秘話」と題されていますが、実際の内容は「手塚治虫創作秘話」。
手塚治虫先生の「火の鳥」「アトム」「リボンの騎士」などあらゆる手塚作品について言及される、伝記的な読み物です。
手塚治虫といえば半ば神格化されている存在ですが、前巻で描かれていた通りダンボールを敷いた上で仮眠を取る人間的な神様だ、という事を今巻でも描いて行きます。
ベレー帽が無いと描けない、高田馬場の赤いきつねじゃなく下北沢の赤いきつねが食べたい、スイカが食べたい、差し歯がないと描けない……
柔和なイメージが強い手塚先生ですが、多くの人が口を揃えて意外な我儘を言う手塚像を語っています。
老アカギのふぐ刺しのエピソードを彷彿とさせました。
しかし、そんな完璧でない部分も、人間味があって魅力的に感じます。
ちょっと銭湯に行って来る、と行って600km離れた宝塚まで奔走してしまうエピソードなども笑えます。
まあ一読者としては楽しいのですが、当時の手塚番の編集者の方々は胃に穴が開く思いだった事でしょうね。
手塚番は、一人だと居眠りしてる隙に先生が逃げる。
二人だと一人が寝ている隙にもう一人が先生を連れ出す。
だから三人居ないと駄目、というお話も面白いです。
それでも、やはり創作に賭ける情熱・エネルギーは桁外れ。
同時に三枚の原稿執筆など、人間離れした正に神業を断行する姿に痺れます。
5日間まともに寝ないなどザラという頑張りには、私も触発される物がありました。
2,3日寝られない程度で不平を垂れている場合ではないですね。
「黄金のトランク」「複眼魔人」などのマイナー作品も挙がるのが、手塚ファンとしてはニヤリとしてしまう所。
そうでなくとも、松本零士、赤塚不二夫、石ノ森章太郎、藤子不二雄など、トキワ荘の錚々たるメンバーが登場する様は漫画好きには堪らないものがあります。
手塚治虫フリークとしては、こんなに面白い作品はそうありません。
手塚治虫に明るくなくても、読み物として面白いですし、逆に興味を持ってこから入門する事も可能だと思います。
80点。
エンジェル・トランペット 1巻
赤石路代
ドラマ化された「P.A. プライベートアクトレス」や「AMAKUSA1637」「暁のARIA」などでお馴染みの、ベテラン作家・赤石路代先生の最新作。
今作は超能力を持つ幼い姉妹の逃亡劇を描いた、現代SFサスペンスです。
主役となるのは、まりもと凛、二人の少女。
最初はどういう状況に置かれているのか、解りませんが、物語が進むにつれ徐々に見えて行きます。
凛の持つ恐るべき"力"とは……
又、姉のまりもの能力は……
敵対する謎の組織、そして味方となってくれる者
疑心と謎が交錯する中、小さな子供達の逃亡は続く……
剣呑とした物語ですが、一方で随所に登場するころにゃんたまが可愛いです。
グッズが発売されたら買ってしまいますね。
お話自体は少々古風な雰囲気で90年代的な香りも漂いますが、続きは気になります。
65点。