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3・11を忘れないために ヒーローズ・カムバック
世の中理不尽だらけだべした。
自分さ殺して生きていくしかねえんだよ。
2011年3月11日に起きた東日本大震災の復興支援を目的に、細野不二彦先生の呼びかけによって始まった「ヒーローズ・カムバック」プロジェクト。
小学館系の作家さん達が集結し、かつてのヒーロー達が時を超え再び目の前に戻って来るという夢のような企画です。
収益・印税は全て復興基金や育英基金へ寄付されると共に、紙は日本製紙石巻工場のものを用いているそうです。
…・・もう、この表紙を見ただけで涙すら流れて来るではありませんか。
細野不二彦先生の『ギャラリーフェイク』特別編、山田玲司が震災に遭う所からスタートするこの本。
吉田戦車先生の『伝染るんです。』のかわうそさんが!
藤田和日郎先生の『うしおととら』のうしおやとらが!
椎名高志先生の『GS美神 極楽大作戦!!』の横島や美神やおキヌちゃんが!
ゆうきまさみ先生の『究極超人あ~る』の田中一郎が!
更に高橋留美子先生の『犬夜叉』の犬夜叉やかごめが!
そして、極めつけに島本和彦先生が描く『サイボーグ009』の天使編が!
もう、単行本を開く事でしか会えないと思っていた彼等が、紙面の上で生き生きと当時と変わらず躍動している奇跡。
往年のファンからすれば全作に涙を流さざるを得ない、正にヒーローズ・カムバック。
『うしおととら』に関しては、今となっては第一線で活躍中の当時のアシスタント、
『花もて語れ』の片山ユキヲ先生、
『烈火の炎』『MAR』の安西信行先生、
『美鳥の日々』『あいこら』の井上和郎先生、
『金色のガッシュ!!』の雷句誠先生、
錚々たるメンバーが再び集まって、一人ずつけものの槍を描き下ろしたそうです。
思わずもう一度、『うしとら』を全巻読み返したくなる事必至です。
島本和彦先生の石ノ森プロ協力の下で描かれたという『サイボーグ009』も、また凄まじく素晴らしいです。
先生ご本人も『009』の大ファンであるだけあって、石ノ森テイストを最大限に引き出し原作の味を大切にしつつ、新しい009を見せて下さいました。
また、荒川弘先生は、『銀の匙 Silver Spoon』の番外編を描きおろしております。
主人公八軒のルーツである、屯田兵だったご先祖様の物語を描いたこちらも、大変に素晴らしい漫画です。
それぞれの作品は、元の作品を読んでいなくても読み切れる短編の体裁を取ってはいますが、やはり当時愛読していた人間には桁違いの感動があります。
そして、プロジェクトとは別に描いていた、かわぐちかいじ先生の震災での自衛隊の活動を描いた「俺しかいない~黒い波をのりこえて~」も収録。
神戸の時の無念を抱え、被災地で全力を尽くす隊長の言葉に胸を打たれます。
ダイレクトに震災に纏わるストーリーは最初の『ギャラリーフェイク』と最後のかわぐち先生の描きおろしだけですが、往年のヒーロー達の新しい活躍の姿は、
長く生きているとこんな素晴らしい奇跡に巡りあう事も出来るのだと教えてくれました。そして、この作品に遭うこと無く逝ってしまわれた方々の無念も偲ばせられます。
私も定期的に募金をする位の事しか出来ていませんが……
今、生きて活動できる有り難さを再認識し、決して過酷な苦難に遭っても絶望することなく、出来ることをやって生き続けていかなければなりませんね。
この本を買う、それだけの事でも小さな支援になると信じて。
今プロジェクトを企画された細野不二彦先生、そして参加された先生方に心から敬服致します。
往年のファンの方は勿論、そうでない方も是非ともお手にとってみて下さい。