エーヨーヒーロー
原作:真実イチロ、漫画:宮越和草
私はどんな人にも
幸せに食事をして欲しい
信じているの
「美味しい」は心も体も救うって
公式サイトで1話を試し読みできます。
社会人でもある真実イチロ先生原作、『月下暗黒読本』や『吸血愛人』の宮越和草先生が作画を担当という今作。
タイトル通り、管理栄養士を描いた職業マンガです。
専門的職業マンガって、それだけでも面白いですよね。
今作はストーリー自体もしっかりと構成されていて、痛快さもあります。
一巻完結という手に取り易さもありますので、広くお薦めしたい一作です。
伊武病院に新しくやって来た、管理栄養士の松下マツコ。
彼女は赴任早々、残飯量の多さを見かねて先輩のベテラン管理栄養士に
「塩を抜くだけなら サルでもできる」
と物怖じせず言ってのける豪傑。
かつて管理栄養士を目指して国家試験を受けたものの落ちてしまい、日々の仕事を漫然とこなすだけだった栄養士の青年・安藤も、マツコが来たことによって変化が現れる――
彼女たちが病院食の改善や栄養学的な療養に携わって行く様子が描かれて行きます。
私自身「食」には強い興味があり、小学校の家庭科での栄養の授業が異常に楽しくて成績も抜群だったので、微かに「将来は栄養士になるのも良いかも」と思ったことがあった位です。
しかし、管理栄養士と栄養士の違いは? と今問われると細かい所の説明まではできないので、色々と参考になりました。

彼女たちが担当する患者には「365日ラーメンを食べ続けて高血圧になってしまったラーメンブロガー」など現代的なケースもあって興味深いです。
実際、一年で387食も二郎ラーメンを食べ続けたブロガーが更新を停止して話題になったこともありましたが……
果たして、「血液はスープでできている」「ラーメンが食べられなければ死ぬ」と豪語する男に、管理栄養士はどんな手を打つのか?
他にも、小麦アレルギーのフランス料理人や、ミキサー食の見た目を受付ないものの普通の食事は嚥下不能の頑固な老人など、様々な厄介な患者が登場します。
保守的な病院組織に対して敢然と立ち向かいながら、患者に親身に寄り添っていくマツコの姿は、格好良く爽快です。
「昔から病人が美味しくない料理を食べることは
仕方ないとされてきた
私は そうは思わない!」
と熱弁するマツコは、作業量が増えることに難色を示す職員達をも説き伏せ、匂いも見た目にもこだわって美味しく食べてもらえてかつ栄養学的にも完璧な病院食を目指していきます。
今作は栄養士マンガではありますが、もっと根源的な「人間にとっての『食』という行為」その物を考えさせられる側面も持っています。
故に、ある意味でグルメ漫画好きの方も触れておいて良い作品かもしれません。
仕事は完璧でありながらも、少し残念な部分もあるマツコさんが素敵です。
この物語は実写化にもとても適しているので、『目玉焼きの黄身いつつぶす?』位のノリで数夜連続ドラマにしても面白いと思います。
栄養士という仕事に興味のある人、病院を舞台にしたドラマが好きな人、強くて格好良いドSなお姉さんが好きな人に強くお薦めです!
75点。