ほしのうえでめぐる 1,2
倉橋 ユウス
願いを持つことは大事だけど
どう生きるかがもっと大事なんだよ
タイトルと表紙絵から響く物が既にあり、「きっと私、これ好きそう」という予感がしていました。
そしてその勘は的中し、読後は良い漫画が読めたなぁ~、と幸せな気分になりました。
舞台は近未来。
そこに存在する老若男女にロボット、様々なキャラクター達の姿を描いたオムニバス短編集です。
第一話は、「明星」の上級職員である小崎メグミと、丘の上の輸入雑貨店の島田タケルの二人の仄かな恋模様を描いた物語。
月に一回ほど、明星の人工島からやって来てはストレス発散をしてまた島へ帰っていくメグミ。
子供の頃はぜんぶなんとなく
「外側」から憧れたりするもんだ
あの気持ちは大事だ
夢への原動力だ
「あれ乗りてえー」
「作りてえ!」
「宇宙行きてー!」
これを補充するとだな
何言われても「ふふーん」て感じだぞ!
子供の頃に誰しもが抱く、純粋な夢や憧れ。
しかし、人は大人になるにつれそんな気持ちを無くし現実と折り合いを付けながら生きていきます。
そんな中で、普段は自己中心的ですが大人になっても純真無垢で真っ直ぐな想いを抱き続けるメグミの姿は眩しく魅力的です。
スタート位置の確認作業というのは、大事なこと。
そして、その後に起こる展開と演出がなかなかになかなかです。
単純でない、玄妙な味わいが心地良いですね。
又、見た目は某テラフォーマーのようで気持ち悪がられるロボット、グレゴリーを描いたお話は個人的に大好きです。
信頼は目に見えんから困るな
というセリフも格好良いです。
「ドラえもん」の最終話の内の一つを思い出すような感動がありました。
最後にはグレゴリーが愛しくて堪らなくなります。
男は基本的に生ゴミだと
思うことにしたんです
と、刺激的なセリフが飛び出すマーガレット系統なストーリーもありつつ。
1巻に5話、2巻で10話のお話達。
思わずワールドエンズスーパーノヴァを流しながら読みました。
全体を通してしんみりと胸に迫りつつ、夢や希望の光と影、それらに関わる人々の生き様と関係性に、仄かな暖かさが胸に灯る読感です。
それぞれが独立して完結していながらも、相互に作用していく群像劇ならではの味わいも良いですね。
読む人が読めば、2012年のベストに数えても可笑しくないと思える内容です。
SF要素も恋愛要素も結構ガッツリと入っているので、その両方が好きである方には間違いなくお薦めです。
どちらか片方は好き、という方にも。
アライブの「恋愛遊星」も同様のSF+恋愛系オムニバス連作短編集で評判も良いので、そちらもチェックしてみようと思います。
75点。