蟹に誘われて
panpanya
白泉社 書籍扱いコミックス
panpanya先生の最新短篇集『蟹に誘われて』が満を持して発売!
前作『足摺り水族館』(紹介記事)は一般流通に乗っていなかったにも関わらず、「このマンガがすごい」、「俺マン」、「マンガ大賞」など、様々なアワードでその名前が挙がった注目作でした。
今回は、「楽園」や同人誌掲載作品に描き下ろしを加えた物で、書籍扱いにはなっていましたが普通に本屋さんで買えます。
書店で4面平積みされているのを見て、多くの人に手に取って貰えそうだなあ、と思いつつ購入。
全体的な読み味は『足摺り水族館』と同質で、不思議な夢想空間の中に気持ち良くたゆたうことができます。
どちらかが気に入ったなら、もう片方も安心して楽しめるでしょう。
「蟹に誘われたことがある」から始まる表紙に書かれた文章の通り、「耳をすませば」のムーンに誘われた雫のように、主人公が蟹に誘われて始まる短編集。
心を掻き毟るくらいこの世界観が好きで好きで堪らない、という人が生まれるのも解る短編集です。
75点。
全体的な読み味は『足摺り水族館』と同質で、不思議な夢想空間の中に気持ち良くたゆたうことができます。
どちらかが気に入ったなら、もう片方も安心して楽しめるでしょう。
名前も判らない少女が、日常と隣り合わせに存在する奇妙な事象に触れて行きます。
女の子が可愛いつげ義春先生的な趣もありますね。
ココナッツ工場でココナッツを割って電気を作るバイトの話、不思議な街で幽霊扱いされたので自分の体を駅の遺失物センターに捜しに行く話、タクアンのプラモデルの話、闇鍋ならぬ明鍋をする話……
あらすじだけでも如何に珍妙なお話群か伝わりそうですが、そんな中にも普遍性を見出せるお話も。
宿題を終えただけで途轍もない開放感を覚えた土曜日。
もし、これからの時間全てを明日の準備の為に費やしたとしたらかつてない最高の日曜日を迎えられるのではないか、と入念過ぎる準備を始めるのだが……
オチもしっかりついていて、良いですね。
今作も、まるで図鑑のような装丁に加え、巻末にはまさかの索引も。
例によって「サンエブリー」が推されているのに名状し難い感覚になります。心を掻き毟るくらいこの世界観が好きで好きで堪らない、という人が生まれるのも解る短編集です。
独自性の強い夢想空間、興味があれば覗いて見るのも良いかと思います。
75点。