おんなのいえ
鳥飼茜
まわりの「幸せの規範」を踏み越えて
等身大でひとり
自由に生きられるほど
オトナにはなれてない
うん トシってこわい
既巻紹介 1巻75点
30歳を目前にして、3年同棲中の彼氏に別れを告げられた大前有香。
傷心で倒れた有香は、母親の命ずるまま妹との東京での二人暮らしを始めた――
いやあ、刺さりますねぇ……。
登場人物の悩みや不安、焦燥、激情がひしひしと伝わって来て、身も心も抉られます。
アラサー女子のシビアな恋愛モノから敷衍して、より普遍的な物語となって来ました。
今巻のキーマンとなるのは、三人目の「おんな」である母。
人間てのは損が嫌いな生き物でさ
みーんないかにして他人様より上手く立ち回るかって頭でもって
何が本当に必要なのかも考えないで
損だけはするまいって
色んなものさっさと捨ててくのよ
失った時間とはどっかで手を切らへんと
「変わる」ことはできひんかも知れんと思ってな
一つ一つのセリフが、とても味わい深いです。
有香と電話している時に、韓流ドラマのお伽話としての良さを語る母のシーンがとても効いてくる構成になっています。
「おんなのいえ」というタイトルの意味を再確認しつつ、身につまされます。
人生の辛みを必死に和らげようとする人間の姿に、何も思わずにはいられません。
又、東京で有香が新しく見初めた男性・川谷にも、意外な事実が発覚。
それに対する有香の反応は――
二人でいても二倍の寂しさがあるだけの事もある、と語る彼の言葉にも頷かされます。
その流れで彼が語る大人の男女関係に纏わる話がとてもシビアで生々しい。
けれども、しっかりと本質を捉えている感覚があって、苦々しくも味わい深くセリフを噛み締めていきました。
あらすじやらポイントだけ抜粋すると割と暗めの印象も強い気もしますが、所々に差し挟まる関西人のノリやカタルシスもあるので、全体的な読み味としては割とバランス良く纏まっている印象です。
そして、今回もやはりお好み焼きやもんじゃを始めとして食べ物が美味しそうです。
お腹が空くとまずい時間には読まない方がいいかも(笑)
基本的に女性向けですが、男性でも大いに読む価値のある物語。
お薦めです。
75点。