おんなのいえ1巻
鳥飼茜
大人になった現実は
カッコ悪いことが多すぎて
誰かのせいにしたかった
『おはようおかえり』(1巻70点 2巻70点)の鳥飼茜先生の最新作。
個人的には、1巻目にして『おはようおかえり』よりも更に好きです。
30歳を目前にして、3年同棲中の彼氏に別れを告げられた大前有香。
自分の夢であるイラストレーターを諦め、仕事も辞めて彼に尽くそうとした所での出来事に、有香は人生を見失い、地元の大阪に帰省する。
傷心で倒れた有香に対し、母親は妹との東京での二人暮らしを命ずる――
相変わらず、出て来る食べ物が魅力的な作品です。
生粋の関東人である私は、この「錦マヨネーズ」という物を食べたことがないですが、とても美味しそう。
そして、やはり主要人物は関西弁全開です。
父性の不在、アラサーながら幼い精神構造の主人公。
かなり現代的なお話です。

結婚し子供を持った女友達との会話で、既に先に行ってしまい自分との差がある事を痛感させられる有香。
弱ってる時
女友達は毒にも薬にもなる
という表現にとても納得しました。
その後の、女友達は預言者にもなるという件も併せて良いシーンだと思いました。

有香が働くことになったキャバクラで出会った男性・川谷は、今後のキーマン。
彼も有香に突き刺さる言葉を投げ掛けてきます。
「周りには悪い人はおらず、世界は善意に溢れていると思っていたい」。
同じ事を妹にも言われる有香は大きな子供ですが、ただそんな彼女に共感できる人も今の時代は特に多いのではないでしょうか。

原作となる短編は、6年ほど前に描かれたもののようです。
当時から、女性の会話の描写の巧さに特筆すべきものがあります。
日々の事、今作ってる料理、テレビのチャンネルなど同時並行で滝のように流れていく会話が実にリアル。
個人的にはこの頃のありちゃんの髪型が好きなので、前で二つに分けないで欲しいなとどうでも良い事を思いつつ。
普段は疎ましく思ったり、些細なことで争い険悪になることもあれど、やはり家族は家族。
一番助けが欲しい時に、無償で何かをしてくれる掛け替えのない存在として、心温まる様態が描かれて行きます。
世間の世知辛さがありありと描かれる中で、その温かみが対照的に輝いて見えます。
世間の世知辛さがありありと描かれる中で、その温かみが対照的に輝いて見えます。
果たして、ありちゃんは幸せになれるのでしょうか。
今後も楽しみにしたいと思います。
関西出身の20代女子、特に上京経験のある方は共感できるポイントが多々ありそうです。
男性も、妙齢の女性の心を勉強する為に読んでおくと良いかも?