レイチェル・ダイアル 1
皿池篤志
「お嬢様は――機械を命と呼ぶのですね」
「うん 私はアレックスもマックスも
いなくなったら悲しいと思うから
亡くしたくないと思うならそれは命という事じゃない?」
ミラクルジャンプで連載中の、投稿作がそのまま連載作品になったという期待の新人・皿池先生のデビュー作です。
「俺マン2012 ネルヤナイト」にて、期待の新作として名前の挙がっていたこの作品。
Twitter上で表紙デザインを4つの候補の中から選ぶアンケートを取っていましたが、いざ店頭に並んでいる単行本を見ると、私も投票したデザインになっていて思わずニヤリとしました。怪しい人です。
お話は、表紙の3人が中心となったSF活劇。
そして、二人の飄々とした青年型のアンドロイド。
マックスとアレックスは、互いを「相棒」と呼び合うバディ。
二人共金属をエネルギー源とし、バリボリと食べます。
そして、食べ過ぎた結果……
イケメンがデブになったり戻ったりするのはインパクトがあります。
アンドロイドでありながら、他の面では殆ど人間と変わらず愛着の湧くコンビです。
この3人のキャラクター性、掛け合いの面白さがストーリーを牽引していきます。
好きな人は、この雰囲気かなり好きそう。
コミカルな描写も豊富ながら、背景となる世界設定はシリアス色の強いもの。
世界は人を殺さない為、ロボットによる代理戦争を行うが泥沼化し、最終的に世界中が武力を放棄した近未来。
その中で、戦争の名残や因縁がストーリーに絡み合ってきます。
「ガンダムW」などを思い出す所ですね。
「マスターキートン」のような、哀愁と遣る瀬無さを感じさせるエピソードも。
幕間のコラム「どうでもいい話」では、「科学が進化しているのにデザインが古風なのは、プラスチックのような合成樹脂が発明されなかった世界であるため」といった内容の濃い設定補足がなされております。
ただ目新しさは薄く、キャラの造形やストーリーも既存の作品の継ぎ接ぎという印象は強いです。
しかし、しっかり練り込まれた設定、決めシーンでの表情の描き方、見開きシーンの迫力、セリフのテンポの良さや、総合的な演出力等に高い地力を窺わせられます。
これが投稿作というのでしたら、今後この「レイチェル・ダイアル」は勿論、皿池先生の他の作品も楽しみです。
アクション、近未来SF、おてんばお嬢様、バディ物などが好きな方にお薦めです。
75点。