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Channel: マンガソムリエ兎来栄寿のブログ 先刻の箚記(さっきのさっき)
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こんなはずでは

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こんなはずでは
阿弥陀しずく
祥伝社on Blueコミックス

だってそれ
この先もずっと
幸せってことですよね?

昨年、『ちいさくともる』で商業デビューを果たした阿弥陀しずく先生が、二冊同時発売。
片方は、一般向け恋愛マンガの『
からっぽダンス』、そしてもう片方がこのBL作品『こんなはずでは』です。
『からっぽダンス』と『こんなはずでは』には、それぞれの作品がクロスオーバーした後書きマンガも収録。

阿弥陀先生の作品はですね~、派手な絵柄や設定や展開ではないのですけれど。
何となく一つ一つの所作であったり機微であったりが可愛かったり滑稽だったり、それが何とも言えない心地良さを放っているのです。
そうして生まれる、作品全体を包む何とも言えない趣ある空気感が素敵なのです。


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新入社員の安達は、高身長でイケメンともてはやされながらもどこか抜けた男。
女の子にはモテても最後にはフられてしまう。


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そんな彼は、会社の先輩である森に並々ならぬ興味を抱いていた。
その気持ちは恋なのか。
森の誕生日を目前に控えた安達は自らの気持ちに悩む――


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今作で一番良いなと思ったのは、この扉絵。
この一枚だけで、安達が森に惹かれた瞬間のビビビッと来た感を体感できた気分です。
背は低いけれど、仕事もできて所作もスマートな森。
ある意味で自分とは正反対の存在であるが故に、引き寄せられる物があったのかもしれません。


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又、このシーンも好き。
天気のいい日にいつもの喫茶店の決まった席でホットサンドを食べる森さんが好きだ、としみじみ感じ入る安達。
こういう、何故だか解らないけれどその人のこの仕草が何となく好き、というのはありますよね。
他人からすれば謎ですけれど、いわゆるツボというヤツが。
一方で、他のシーンでは元気にもりもり食べる安達の姿を愛しそうに見つめる森の姿も描かれます。
美味しそうに物を食べる子って良いですよね。
安達と来たらどこまでも犬っぽい。
森は猫っぽい、というか実際ネコなんですが(おい)。

気怠そうに食べる森、にこにこ食べる安達。
やはり対照的ですが、それがいいカップルです。

そして、恋愛に発展するまでの描き方も良い。
じっくりコトコト煮込むように、少しずつ少しずつ丁寧に描いていかれます。
そこに生ずる一喜一憂は激しいものではないのですが、味わい深い。

特に珍しい訳でもない、変哲もないBLという評が下されたとしても、それは間違いではないでしょう。
ただ、そこに良さがきっちりと宿されている作品です。
このあっさり感に物足りなさを覚える人もいるかもしれませんが、私は良いBLを読めたという幸福感に満たされました。

犬っコロな後輩の攻め・強気の先輩が受けに回るというシチュエーションにグッと来る方、オススメです。


75点。

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