
かみさまサクリファイス1巻
黒山メッキ
エンターブレインビーズログコミックス
つぎに神様は何を奪うと思う?
コミックウォーカーにて1話が読めます。
寄宿舎モノといえば古今に名作がありますが、そのシチュエーションだけでご飯を食べられますよね。
通常の学園物としての面白さに、閉鎖環境ならではの独特の仕来りや関係性が付与されることで、その魅力は無限大。
個性豊かでイケメンの仔羊たちが織りなす、ミッションスクール生活に興味がある人は寄ってらっしゃい見てらっしゃい。

私立黒ヶ岳仔羊学園。
そこは、74年の歴史と伝統を誇るミッション系男子校。
主人公は、そこに入学した新入生の少年・虚木春喜(うつろぎはるき)。
彼は、災難や事故を呼び寄せてしまう体質を持っており、小さい時から周囲に「疫病神」と呼ばれ、忌み嫌われていた。
そういった世間から逃げるために、山奥の学校に来て誰とも関わらず友達も作らないと決めていた春喜。
しかし、そんな彼に、ミッションスクールにも関わらず仏教徒でヅラを被った坊主の葛良徹(かつらてつ)や、爽やかな同室の先輩・爽田憂(さわだゆう)は物怖じせず近付いて――
基本的にはコメディですが、主人公が背負っているものが重く、シリアス部分もあり、バランスが取れています。
他人に近付いたら、迷惑を掛けてしまう。
だから、本当は友達が欲しいけれど誰にも近付きたくない、というジレンマを抱える春喜。
そうして過ごしてきた故に、いざという時のコミュニケーション能力まで低まってしまっている様子が涙を誘います。
それでも、彼の巻き起こす不幸を「修験」として受け入れる、ヅラですが、イケメンでスポーツも万能葛良とのいいコンビが気持ち良いです。
放課後の「労働」から、部活動、学校行事に至るまで、ミッションスクール独特の風習をしっかり描いており、架空の学園生活気分が味わえます。
特に、普段肉が禁制でおやつもなく飢えた男子高生たちが、数少ない糖分(おかし)を手に入れられる機会であるイースター祭を描いたエピソードは、テンションが高く面白かったです。
学内に隠された、各自で細工を凝らした卵を見つけるという行事なのですが、友人同士が互いの卵を見つけると一生強い絆で結ばれるという、とても美味しい設定もあいまって良かったです。
美少年が大好きな先輩や、好きな言葉が「絶対服従」の教師などクセのある人物が多く、お気に入りのキャラを見つけることができればとても楽しく読めること請け合いです。
変人の集いではありながらも、基本的に皆良い人なので、読んでいて晴れやかな気分になります。
とりあえず1話を試し読みして、雰囲気が気に入ればそのままお手に取って損はない作品です。
75点。