和算に恋した少女 1
脚本:中川真,監修:根上生也 作画:風狸 けん
算術が見せてくれる世界は広い、
ただ目に映る世界よりずっと。
数学やパズルなど、頭を使うのが好きな方、あるいはそういった種類の作品が好きな方にお薦めの新作です。
和算家の父を持つ主人公・米倉律。
彼女が江戸で起こる様々な事件を、律が算術を用いて解決していく物語。
「饅頭の効率的な数え方は?」
など、お話の随所に生活に密着した数学的な問題や知識が散りばめられています。
西洋的な数学を習って来た者としては、和算とのちょっとした差異が興味深いです。
実在の高名な数学者である、関孝和も登場。
まだこの頃は円周率という概念ではなかったんですね~。
私も小さい頃、円周率の計算の仕方を必死に考えた事がありました。
そんな数学的探究心を喚起してくれます。
律の父親は「虚ろなる数」の概念を仄めかした稿本を記して、諸国に算数の心を広める遊歴算家の旅へ。
そんな父に巡りあう事を夢見て「虚ろなる数」の真実を求める律のメインストーリーも面白いです。
ただ出て来る問題に有名な物が多いので、もっとマイナーで難しい問題・面白い問題が増えれば良いなと思います。
「論理少女」や「数学ガール」、或いは「パラドクス・ブルー」といった作品が好きな方には無理なくお薦めできます。
色々な事件が起こりますが、基本的にそこまで血なまぐさい物はなく平和な内容なので、子供が読んでも大丈夫です。
70点。

ヨタ話
新井 理恵
「我に豆鉄砲くらわせたお前の肉を
死なない程度についばみ続けてやる」
あの目はそう言ってるわ
「× ペケ」の新井理恵先生が描く、1ネタ数ページの連作短編ギャグマンガ。
ネタの破天荒さ、綺麗な絵柄で荒ぶる登場人物達、突き抜けたテンションがとても気持ちいいです。
まず、帯を含めた裏表紙の罠が秀逸で、これを見たら猫好きは手に取らずにはいられないでしょう。
買って帯を捲らないと見られない、その中身とは……!
この、表紙・裏表紙を飾るさゆりは、「吾輩は猫である」を彷彿とさせる思惟する猫。
哲学的な観想に浸りつつも、さゆりをお気に入りとするイケメン男子高生の前では形無しになり俗物的になってしまうギャップが可愛いです。
以下は第一話で描かれるネタの一つ。
いつも電車の中で見る格好良い男子に恋してしまった女の子。
普段は陰気な自分。
けれど、勇気を振り絞って声をかけてみようと決意する。
しかし、ある日彼が友人たちと
憧れの彼から飛び出るのは「陰気な女なんてキメェんだよ」という言葉。
その言葉に傷付き、破れた初恋を胸に去って行くのですが――

「は?綾波のドコがキメェんだよ
ハルヒなんか自己中すぎてほぼキ●●●じゃねーか」
「素直で可愛いじゃねえか」
「マトモな男なら翠星石みたいなフツーのコにしか目がいかねーだろ」
まさかのヲタ会話だったっ……!
そんな意表をつくギャグから、彼氏の飼う鳩に強襲され続ける女の子、KY過ぎる嫁に姑が可哀想になって来る母子ドラマなどなど……
下もサブカルも時事もウィットに富んだ物も、盛り沢山の内容になっています。
また、子猫のるららちゃんが可愛くて可愛くて堪りません。
幕間のさゆりセクシーグラビアや、カバー下のサービスも満点。
個人的にとてもお気に入りで、続刊が待ち遠しいです。
「サディスティック19」「そんな奴ァいねぇ!!」や、にざかな先生系のギャグマンガが好きな方には絶対的にお薦めです。
70点。