さよならハルメギド 1巻
きづきあきら+サトウナンキ
でも大した事じゃないけどな
どうせ終わっちゃう世界なんだから
試し読みできます
きょうから四姉妹1巻 暁の明星 1巻
【簡易紹介】ヨイコノミライ全1-4巻
バーバ・ヤガー2-3巻
などなど、近年でも多くの作品を精力的に著しているきづきあきら+サトウナンキ先生ご夫妻。
その内容は基本的に心を抉ってくるものが多く、それがまた好きなのですが……
この作品は読んでいる時の辛さで言うと、最近でも屈指でした。
舞台は、1989年。
恐怖の大王が現れると予言されている年から10年前。
主人公の将太は、離婚して独身となっている母親と母子寮で二人暮らしをする小学三年生。
将太自身は母親も父親も大好きであり、二人の復縁を望んでいる。
離婚の原因は自分が牛乳を零したからだと考え、苛まれている様子が実にリアルです。
自分が悪いわけではなくても、余りに辛いことがあると子供としては自らに責任があるのだ、と思い込んでしまいがちですよね……。
両親の一挙一動を見て、細かく感情を察知する様子が健気で、痛いです。
離婚の原因は自分が牛乳を零したからだと考え、苛まれている様子が実にリアルです。
自分が悪いわけではなくても、余りに辛いことがあると子供としては自らに責任があるのだ、と思い込んでしまいがちですよね……。
両親の一挙一動を見て、細かく感情を察知する様子が健気で、痛いです。
そんな母親の下に、大学時代の後輩である優馬が現れる。
母親に惹かれており、関係を臨む男の出現に自らの居場所を失われそうになる将太は――
母親に惹かれており、関係を臨む男の出現に自らの居場所を失われそうになる将太は――
オカルト系の話が大好きな将太は、優馬をUMAと取り違えるのですが、結果的に与えられる影響を考えると強ち間違いでもないという。
家族という唯一の安息の場所を奪おうとするUMAの存在は、正にアンゴルモアの大王。
大人の都合の中で振り回される、子供の感情の揺れ動きが実に巧みに、きづきあきら+サトウナンキ先生らしく描かれます。
周囲の大人の、無自覚で無遠慮な一言。
それが、子供をどれだけ傷付けているか。
母親が優馬と会っている時のこと、優馬と交わす会話、その後で父親に会った時に交わす会話……
三人に一人は離婚している日本。
しかし、世界的に見ればアメリカやロシアでは二人に一人は離婚をしており、生物学的に見てもニ、三回離婚して結婚するのが普通であって、生涯一人の人と添い遂げる方が不自然であるという分析もあります。
今の世の中にはありふれたお話。
とはいえ、両親の不和に巻き込まれる子供にとってそんな論理は知ったことではなく。
自分の無力さを噛み締めながら、ただただ怯え、心に傷を負っていくのみです。
どうせ、1999年になったら世界は終わり人類は滅亡するのだからと考える将太に、小学三年生の頃死ねば無になるのだからと考え続けていた私は、共感を覚えずにはいられません。
そんな状況の中、将太の性への目覚めとなる出来事もまた、ある意味では恐怖の大王的なものかもしれません。
同じ母子寮に住む友人、かずひさ君はどう見ても女の子なのですが……
白田さんへ抱く複雑な感情と、上手く応対ができない様子も含めて子供の時分に覚えた、様々な感情を引き摺り出される作品です。
続きが気になりますが、ニ巻は早くも来月発売。
楽しみ、というか怖いというか……
ともあれ、上質な作品です。
試し読みで引っ掛かる物がある方、1989年に子供だった方、是非どうぞ。