『きょうから四姉妹』1巻
『バター猫のパラドクス』最終4巻
『暁の明星』1巻
と、3ヶ月連続で単行本を刊行のきづきあきら+サトウナンキ先生。
その内の新作二作品をご紹介します。
『ヨイコノミライ』や『バーバ・ヤガー』(1巻75点 2-3巻75点)といった作品が大好きな私にとっては福音のような時。
とは言え、昨日の『ちーちゃんはちょっと足りない』に引き続いて、精神が窶れる内容なのですけれど……
だがそれがいい。
心に引っ掻き傷を残してくれる鋭利な作品を、いつの時も渇望し続けます。
きょうから四姉妹 第1巻
きづきあきら+サトウナンキ
幻冬舎バーズコミックス
自分で選んだものが
おいしいとは限らないし
公式サイトで1話のプチ読みができます。
四姉妹モノというと、真っ先に思い浮かぶのが昨年のマンガ大賞にもなった『海街diary』(4巻85点 5巻85点)。
未読の方には全身全霊でオススメしたい名作ですが、そういえば『海街』も四姉妹になった日からを描いたお話でした。
この作品も、タイトル通り四姉妹になる所からお話が始まりますが、卓越した心理描写の『海街』とはまた違った面で、人の心の彩りが描かれて行きます。
主人公の真鍋桜は、三姉妹の真ん中の高校生。
ずっと友達だと思っていた同級生の魚住から告白され、戸惑っていたある日のこと。
子供の頃から頼りにしていた自慢の兄・かしわが二年ぶりに帰ってくることに。
ずっと友達だと思っていた同級生の魚住から告白され、戸惑っていたある日のこと。
子供の頃から頼りにしていた自慢の兄・かしわが二年ぶりに帰ってくることに。
しかし、帰って来たかしわは女性になっていた――
もし家族が急に性別を変える、と言い出したら。
しかも、それが恋心に近い憧れすら持っている相手だったら。
性同一性障害というものも一般的になって久しいものの、いざ身近で起こってしまったら素直に受け止められる人の方が少ないでしょう。
桜に告白し、強引にキスまでした魚住もそんなかしわに一目惚れしてしまい――
人が互いに傷付き、傷付けられる様を描かせたらきづきあきら+サトウナンキ先生は随一です。
表紙や序盤の雰囲気からしても、設定的には一筋縄では行かないにせよ今作は割とライト目なのかなぁ……と思いましたが、そこはやはり流石のテイストでした。
OLのぼたん、大学生のかしわ、高校生の桜、中学生のもみじ。
それぞれが抱える物に、それぞれの年代らしく対処していく様が味わい深いです。
決して、ただの美少女四姉妹の日常系作品にはなっていません。
この作家でこのレーベルなので、もっと深くもっと痛々しくなることも可能ではあると思います。
そういう点からするとまだまだライトではあると言えます。
今後の展開次第でどうとでもなって行く作品ですので、期待して見守りたいです。
70点。

暁の明星 1巻
きづきあきら+サトウナンキ
秋田書店エレガンスイブもっと!
アリーヌ
神を疑わず一心に信じたお前に
神の守護はあるのか…?
1話冒頭を試し読みできます。
舞台はアンシャン・レジームの時代。
即ち16~18世紀頃のフランス。
ロランとアリーヌの兄妹は、兄妹でありながらも互いに心の奥底では惹かれ合っていた。
しかし、信心深いアリーヌはそんな自分の本心を押し込め、法律家の青年ジャックと婚約。
ある日、ロランが逮捕されたことを切っ掛けに、その身の潔白を示す必要に駆られたアリーヌは、父の命で修道院に遣られる。
友人の話す愛人の話にも顔を真っ赤にする無垢で初心なアリーヌが、醜悪な者達によって穢されて行く過程がじわじわと描かれて行きます。
聖なるものが堕して行く所に愉悦を覚える人には堪らない物語でしょうか。
修道院で寄宿生活を共にする仲間たちの会話の下世話っぷりや、秘密の饗宴の様子が印象的。
『ブラッドハーレーの馬車』(紹介記事)に近いテイストです。
同じ「もっと!」の『ちーちゃんはちょっと足りない』も心に来る話でしたが、こちらもなかなかです。
今後はもっと辛い展開が待ち受けていそうで、ただそれをきづきあきら+サトウナンキ先生には望んでもいるので何とも言い難い所です。
兄妹愛の行方はどうなるのか。
神を信じない兄と、神を信じ抜く妹。
果たして神は二人にどんな結末をもたらすのか。
続きも精神を削られても良いように整えながら楽しみにしています。
ブラックなお話、瀆聖が好きな方にお薦めです。
70点。