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アウターゾーン リ:ビジテッド 2巻 サランドラの壺 光原伸短編集

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アウターゾーン リ:ビジテッド 2巻
光原伸

既巻紹介 1巻70点


ジャンプ黄金時代に、タイトル通り誌面で異彩を放っていた『アウターゾーン』。

連載終了から十数年経ち、今またこうして新しい『アウターゾーン』が読めるようになるなんて想像しておらず、ファンとしては幸せです。

ネット上では、「え、アウターゾーンの新しいが出てるの!?」「前のとは違うの? 愛蔵版みたいなもの?」といった声が散見されるので明言しておきましょう。

この『アウターゾーン リ:ビジテッド』は、正真正銘、あの『アウターゾーン』の新作です。

多少、絵柄が現代的に変化してはいますが……

謎の美女ミザリィと共に、昔と変わらぬ奇譚の数々を楽しめます。


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大学生の真紗美が受けた、謎の高額家庭教師のアルバイト。
どんな問題児が相手なのか恐る恐る訪問するも、特に問題もなさそうな教え子。
しかし、彼が口にする「悪霊」とは――


『リ:ビジテッド』でも、基本一話完結型の短編形式なのは変わらず。

ゾンビに支配された街でのサバイバル物から、宇宙船の中での緊迫した状況を描くSF的な作品まで、内容も様々です。


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今巻で私が一番好きなのは、「エネミー・テリトリー」。

人間と異星人が激しい戦闘を繰り返している星。
そんな場所で、互いの命を預け合うことになった二人のお話。

どちらの側も相手を醜悪で根本的に分かり合うことが出来ない異種族だと認識している中で、芽生える奇妙で稀有な絆。
そして、その行く末に打たれました。


昔の連載時から、ダークな内容ではありつつも、最後の読み味が悪いものにならないよう、基本的にハッピーエンド主義を貫いて来たら光原先生。
それは、こういったタイプのお話に於いては不条理のまま終わらせ放置するよりも苦心惨憺する作業でしょう。
しかし、その労力を賭しているからこそ、今また読める事をこんなにも喜べる素敵な作品になっているのだと思います。

そういった事も含めた、筆者自身による作品解説も健在です。


『笑ゥせぇるすまん』、『Y氏の隣人』、『世にも奇妙な物語』のような作品が好きな方、又B級洋画が好きな方にお薦めです。




こちらは、同時発売の光原先生短編集。
当時のジャンプに載せられた、

今のジャンプには載せられないだろうなぁ、と思うものも(笑)


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いじめられっ子で、義父にもセクハラを受けて世界に絶望する少女が、願いを叶えてくれるという禁断の壺に手を伸ばす――

という、表題作の『サランドラの壺』から始まるこの短編集。

美人の悪役は映えますね。

全部で五つの話が載っており、それぞれに魅力があります。

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本誌掲載時に、萩原一至先生のデビュー作に次いで読者アンケート2位だったという、「リボルバークイーン」。
美女との命を賭けたギャンブルを描く、スリリングで面白いお話。
荒木飛呂彦先生の手塚賞受賞のデビュー作「武装ポーカー」を思わせる、短いページで良質な映画のような短編。


似た系統ですが、更にエグい「非情の標的」も好みです。

かと思えば、「マジック・セラー ~ラストコール~」は、乙一先生の『君にしかきこえない』の元になっているかのような素敵な感動あるお話。


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加えて、作者の光原先生をミザリィとして描いた幕間の「上京物語」がまた面白いです。

屈託のない笑顔など、ミザリィが普段しないような表情を沢山見られるのも楽しいですし、光原先生の涙を誘う上京秘話も味わえます。

巻末のオマケ漫画も熱いです。


『アウターゾーン』ファンは勿論、異色短編好きの方も手に取って損はありません。


70点。

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