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Channel: マンガソムリエ兎来栄寿のブログ 先刻の箚記(さっきのさっき)
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第七女子会彷徨 6巻

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第七女子会彷徨 6巻
つばな

楽しい事は長く
嫌な事は短く…
それがどんなに愚かなことか
思い改めなさい


既巻紹介 1巻65点 5巻75点


女子高生を主人公にしたSF(少し不思議)系オムニバス。

「ドラえもん」「アウターゾーン」「Y氏の隣人」「アフターゼロ」のように不思議なアイテムや存在が登場しつつ、女子高生の日常系漫画のエッセンスを加えた感じです。


藤子・F・不二雄先生以来の「SF(少し不思議)」を感じさせるのは、全体的な力の抜け具合と、油断していると感動的なお話が来る起伏でしょうか。

石黒正数先生のアシスタントであったこともあって、石黒先生の作品にも通じる部分が幾つか感じられます。

しかし、それらの総体となった『七女』は、他にない奇妙な魅力を携えた作品であり、私の心をガッチリと掴み続けています。


今巻で好きな幾つかのエピソードを紹介します。


photo:04

今巻最初の「人生省略術」。
楽しい時間はあっという間で、苦痛な時間は長く感じられる相対性理論。
それを、脳の時間処理能力を調整して逆転させる、というお話。

長く感じられる楽しい時間、あっという間に終わる嫌な時間。
単純に考えれば夢のようですが、その果てで高木さんが至った境地は――

最後の大ゴマで高木さんが語る言葉が好きな一篇です。



photo:05

「存在と理由」
哲学的な、哲学に於いては究極的なテーマでもあるタイトル。
理由の前に行動を先立たせようと、意味もない行動を取ろうとする高木さん。
厭々ながらもそれに乗っかる金やん。

二人の不毛で軽妙な掛け合いが面白可笑しく、一方で色々考え込んでしまうお話です。
作中で「トマソン」が出て来るのも、個人的にツボでした。
とある存在が存在する理由としての、このエピソードの存在意義という入れ子構造的な部分も面白いです。


前後編に分かれた大ボリュームの第50話「?の見え方」「?の行く場所」では、P124ページの高木さんの言葉に感動しました。
驚かされるようなシーンもありつつ、こういう着地をしてくれるから本当に素敵です。

「十字路の悪魔」も良いですね。


基本的に1話完結型でありながら、構成の妙により、雑誌で単話で読むよりもコミックスで纏めて読んだ方が面白味が増すのも、この作品の特殊性ですね。
そして、読むと過去巻も確認の為に読み返したくなって困ります。

そんな中、次巻は丸々一冊の続き物のお話と、これまでとは毛色が変わるようで。
『七女』の七巻からは目が離せないですね。


変なツボを押さえてくれることに関しては無類の作品です。
嵌れば病み付き間違い無しの、つばなワールド。
試してみるのも悪くないと思います。

『みかけの二重星』(紹介記事)も良いですよ。


75点。

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