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Channel: マンガソムリエ兎来栄寿のブログ 先刻の箚記(さっきのさっき)
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カーマトリック1巻

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2月後半からの新刊ラッシュで更新したい作品は数多くあるのですが、花粉症に苦しみ喘ぎ体がついて行かない日々です……。
しかし、この作品は紹介せねばという使命感。



カーマトリック
中西達郎

すでに逃げ道がないのなら
どうせ死が避けられないというのなら
一つくらいは謎を解き明かしてから
死んでみせる!!



コミックブレイドオンライン
http://comic.mag-garden.co.jp/blade/1817.html
で連載されていた、中西達郎先生の作品。
現在、この単行本の前日譚に当たる「EPISODE 0」が閲覧可能です。

『パラドクス・ブルー』『グローリィロード』の原作を担当した二作品を挟み、『CROWN』以来の4年ぶりとなる単独連載作という事で、ファンとしてとても楽しみにしていた作品です。

自分が大好きなだけの作品を選ぶ

俺マン2012 兎来栄寿選

に於いても、名前を挙げております。

何と、この『カーマトリック』は全ページフルカラー!
しかも、コミックス化される際に前頁加筆修正という流石としか言いようのない気合いの入りようです。



世界は、20年間正体不明の敵「侵略者(ミネラリアン)」の猛威に晒されていた。

photo:11

主人公・紅明石(くれないあかし)は、失踪中の世界の敵である父親からのメッセージにより東京都内に赴く。

時を同じくして、新種の侵略者によりお台場基地は壊滅。
都内には未曾有の大量の侵略者が現れ、明石も強襲される。

photo:13

そこで明石は、軍のLGE(機動歩兵)フォーブレイドを駆る、英雄と呼ばれる少女・藍澤葵に出会う――


フルカラーで描かれるLGEや侵略者の美麗さ・迫力は素晴らしいです。


そして、この作品の一番の見所は、表題である「対侵略者用迎撃兵器カーマトリック」。

「ネオポリス計画」の裏で、極秘裏に進行されていた「カーマトリック計画」。
果たして、「カーマトリック」とは何なのか?

photo:12

兵器目録に書かれるのは、何故か東京23区とその観光名所。

上野公園、スカイツリー、国立競技場から、北千住駅、旧岩崎邸、大森貝塚、パルコ、109、中野ブロードウェイ、日本武道館、渋沢栄一像などなど、その内容は多彩です
(但し、文京区、江戸川区、板橋区、練馬区などは、決定的な場所が無いためか、開発中となっています)。


咲-Saki-ファンとしては、聖地である国際フォーラムや国立オリンピック記念センターも含まれているのを見過ごせません(笑)

更に地元住民として一つ突っ込むと、品川駅が品川区に入っていますが、品川駅は港区です!
ついでに、目黒駅は目黒区ではなく品川区というこの辺りの土地事情はとてもややこしく、解り難いのですけど。


と、ちょっと話が横に逸れましたが……


そう、カーマトリックとは、何と!

東京の各名所を模った、或いはそれ自体を改造した超強力な兵器なのです!

photo:14

池袋サンシャイン60や、新宿文化センターが兵器となり、侵略者へ対抗していく!

何たる破天荒な発想!
ですが、とても面白いですね。
東京を舞台にした作品は数多くありますが、東京が兵器になるなんて。
よく知った場所や建造物を武装として、未知の脅威に立ち向かっていく姿には謎の熱さが込み上げます。

特に、見開きで描かれる東京を代表するアレなどはもう最高です。

『X』を読んで、「ああこの国会議事堂の下には秘密の空間があるんだな」と思うように、「ああ、このサンシャインビルはミサイルコンテテナなんだな」とよく解らない感慨に耽る事が出来るようになります。



そして、中西達郎先生作品の醍醐味といえば、単行本での濃密な書き下ろし。
先生の作品ほど、カバーを外すのが楽しみなものはありません。
photo:10

今回も案の定、字がびっしりの用語集&小説つき。
巻末には4コマ漫画や設定資料も付いていてサービス精神満点です。

こういった設定を作品外部で長々と書き連ねる事へも賛否はあると思いますが、私としてはこういった物が大好物なので美味しく頂きます。


ただこの『カーマトリック』、恐ろしい事にとてもいい所で連載終了となっており、このコミックスにも巻数表記がありません。
1巻で終わる可能性もかなり高いです……。

とはいえ、物語が完結まで描かれないのはいつもの事で、今回も冒頭2ページ目で既に今後の展開の多くが明示されていて予防線も張られているのですが……。

このネタをここで終わらすのは勿体無いですよね。
東京23区のみならず、行く行くは47都道府県の名所、そして世界中の名所を兵器化する事も可能でしょうし。

帯にあるアンケートは読後3分で書いて送りましたが……果たしてどうなることか。


基本的に中西達郎先生の作品は尖り過ぎている&綺麗に終わらない事が多いので、汎くお薦めとは言い難いのですが、この「カーマトリック」は楽しむためのハードルも低く、特に首都圏在住の方には面白く読めると思います。

遂に連載再開の『ファイブスター物語』など、緻密な設定&メカアクションが好きな方、中学二年生の男の子が好きなタイプの作品を好む方には特にオススメです。


75点。

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