異骸‐THE PLAY DEAD/ALIVE- 1、2巻
佐伊村司
徳間書店リュウコミックス
人類は繰り返す
いつの時代も争ってきた
何千何万年と続いてきた――
何と、二巻の帯には新井英樹先生の寄稿が! 新井英樹先生の帯というのも珍しいですが、これからは新しいことに何でも挑戦したいと云って女装も始めた新井先生。その一環でしょうか。
ともあれ新井英樹先生大絶賛という触れ込みは伊達ではありません。
今作は、学園を舞台にしたゾンビ物。
ゾンビに噛まれた人間はゾンビになってしまい、どんどん増殖して行くゾンビ達の恐怖……それだけなら、よくあるお話です。しかし、このマンガは一味違います。
ゾンビモノ、パニックアクションモノは世に溢れていますが、一つの切り口でまたこうして新しいモノを提示できるのかと感心しました。
突如、人間を襲い掛かるようになった生徒たちが出現した学校。主人公アキラの幼馴染み・くるみもまた、ゾンビになってしまった――
可愛く、憧れであった幼馴染みが人肉を求めて自分にまで襲い掛かる豹変ぶりに動揺するアキラ。
しかし、ある瞬間くるみや他のゾンビたちは突然平静を取り戻します。一時的な症状だったのか、と思ったのも束の間。一定の時間が経つことで、またゾンビ化が一斉に始まります。
人間とゾンビを交互に行ったり来たりする存在。それでも、人間でいる時は確かに人間なので事態は厄介を極めます。
アキラを始めとする完全な人間と、くるみを始めとする半ゾンビとなってしまった者たち。仲間であったり、恋人であったりした筈の彼らは、恐怖や怒りから対立を深めて行きます。
その構造、構築の仕方が実に巧みで、面白さに繋がっています。
果たして、恋人や親友に殺されそうになった時、人はそれを甘受するのか、逆に殺してしまうのか……。そして、彼らと対立する勢力図となった時に、どういう行動に出るか……。
ハーフエルフだとか半妖だとか、そういった種の絶対的な壁や不条理が生ずる設定は、色々なモノを語れて好きです。
アキラが尊敬と嫉妬、両方の感情を抱く男・梅澤や、トリックスター的存在の如月など脇を固めるキャラもしっかりと立っています。
如月のようなキャラクターがどういう最期を迎えるのかを見届けるのも、こういった作品での楽しみ。
梅澤も畏敬の念を抱くラグビー部主将の五十嵐も、この作中で圧倒的な存在感を(体の大きさだけでなく)見せます。誰よりも愚直に努力し、屈強な精神と肉体を持つ男もまたゾンビ化してしまっていました。しかし、彼はゾンビの立場ではありながら、対立する人間陣営と半ゾンビ陣営に和平を呼び掛けます。
その結果は――
個人的には、生徒会長も好きなキャラクターです。
ゾンビ化した人間の描き方、表情もそうですが、「キシキシッ」といった擬声語が実に印象的。「異質さ」「異常さ」が、端的に絵で表現されていることで、突飛な設定の中で説得力を高めています。
シリアスな本編に対するカバー裏の遊びも好き。
学園モノが好きな方、ゾンビやパニックホラー、サバイバルモノが好きな方、試し読みから入ってみては如何でしょう。
70点。