
川端志季
集英社 マーガレットコミックス
『累』が最近では典型的ですが、いつの世も美醜は人間にとって深く根差したテーマ。
今作は、『累』とは逆に、美しかった主人公がその美しさを奪われ苦悩する物語です。
ヒロインの高校一年生・小日向あゆみは、ある日クラスメイトの海根然子(うみねぜんこ)と体が入れ替わってしまった。
あゆみの体になった然子は、可愛い容姿で恋人や友達に恵まれた楽しい日々を謳歌し、一方然子の体になったあゆみは今までとはまったく違う孤独や苦難に塗れた日々が始まる――
生まれて初めてできた恋人・公史郎に何とか事情を説明して自分があゆみであることを解って貰おうとするも、ドン引きされてしまう……
そんな中で、唯一違和感に気付くのは、火賀(かが)。
彼ら4人を中心に、物語は二転三転していきます。
入れ替わりだけならよくあるお話ですが、この作品はその先がかなり上手く構成されています。
それは、人間の後ろ暗い感情が織り成す面白さ。
そして、やはり醜いという先天的な要因による不遇には複雑な想いをさせられます。
醜さが故に冷遇され、それが原因で性格まで歪んでしまうという負のスパイラルはどのように解消すれば良いのでしょうか。
さりとて、整形に関してこと日本社会はあまり寛容ではなく。
宮沢賢治を思い出させる醜い鳥の「よだか」というタイトルですが、幕間で語られる最後まで読めば解るという「宇宙」の意味とは何なのか?
今後も目が離せない作品です。
75点。